相互理解

韓国語を通じた地域の多文化共生 ―「異文化理解会話教室」を語る―

韓国語を通じた地域の多文化共生  ―「異文化理解会話教室」を語る―

韓国語と日本語で話す異文化理解会話教室(以下、異文化理解会話教室)では、異文化理解に興味を持ち、韓国語を学ぶ・喋る意志がある方々を対象にして、韓国語と日本語を使い、多様なトピックについて意見交換をしている。

異文化理解会話教室は、地域活動や地域活性化を担う人材育成の拠点となる神戸市長田区の「ふたば学舎」内に位置する「ふたば国際プラザ」で、2022年1月から毎週水曜日に開講されている。多くの参加者は、異文化理解や参加者同士の交流の他、外国語能力の向上も期待していることから、韓国語のテキストやK-POPの歌詞、ニュース記事などを用いて、参加者のニーズを反映しながら行っている。そのため、異文化理解会話教室は、いわゆる「韓国語教室」や「韓国語講座」とも呼ばれている。

参加者らの韓国語レベルは、ハングルが少し読める方から、フリートークができる方まで様々であり、一方的な「学習」ではなく、多くの人が話し合うことができる「交流」の時間になるように努めている。特に、新規の参加者からは、前述の「韓国語レベル」に関する問い合わせが多く寄せられており、初回は緊張する様子も見られるが、二回目以降は慣れた様子で楽しく参加している。

また、開講時間は18時30分から20時に定めているが、これは、学校・仕事が終わった後や、遠方からの参加者が参加しやすい時間帯を想定したものである。実際に、参加者らは長田区だけではなく、垂水区から東灘区まで様々な地域から足を運んでおり、仕事帰りにそのまま参加する方もいる。参加者らは、すごく熱心に参加しており、次回のトピックについて事前に考えたり、メモをとったりして予習をする他、自ら韓国語能力試験(TOPIK)に申し込むことで自己啓発と共に異文化理解を深めている。

他方、異文化理解会話教室は、地域住民の交流の場としても機能している。毎回本題に入る前に、最近一週間の出来事をお話する時間を設けており、美味しかったレストランのおすすめや、旅先、映画や展示会の情報を共有する他、家族の帰省や出産といった私事なども楽しく話している。そして、韓国やベトナム、中国、フィリピンなど、外国にルーツを持つ方々も参加し、国際交流の場としても機能している。

トピックは、「なぜ韓国ではご飯を食べる時に、主にスプーンを使うのか(日中韓の食文化)」や、住居環境、価値観、冠婚葬祭といった身近な事例を用いて異文化理解に繋がる内容となっている。参加者らは、自分の考えを他の人と話し合いながら、他の人の考えを確認したり、意見交換をしたりする会話を通じて異文化理解に取り組んでいる。

異文化理解会話教室は、異文化理解に興味を持つ地域の方々の支持の基、2023年12月で第80回目、2024年で3年目を迎えることとなった。しかし、地域にはまだ多くの課題が残っている。韓国語と日本語で話しながら、地域社会の多文化共生を考えていきたい。

 

2023年12月09日

 李 乘漢(イ・スンハン)

 

※  筆者は、「ふたば国際プラザ」で異文化理解会話教室を行っている他、神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程、神戸市多文化交流員などを務めている。