相互理解

KFC帰国者新長田交流会 前編

KFC帰国者新長田交流会 前編

たくさんの人々が活動するふたば国際プラザの一週間の中で、ひときわ活気にあふれているのは火曜日に行われているKFC帰国者新長田交流会です。

KFC帰国者新長田交流会は中国帰国者が集まり、中国語で会話することができ、ありのままで時間を過ごせる居場所として、神戸市長田区を拠点に2011年から行われています。

中国帰国者

中国帰国者は日中国交正常化(1972年)以降に日本への永住帰国を果たした日本人(中国残留孤児・婦人)とその家族を指します。開拓団などで中国東北地方へ移住し、戦後日本に帰ることができず現地に取り残され、中国人の養父母のもとで育ちました。
(帰国者についての詳細や背景、エピソードについてはKFCのWebページで掲載しています。Webページから交流会のリーフレットや広報誌にアクセスすることができます。)
→<<https://www.social-b.net/kfc/katudou/kikokusya.html>>

交流会に参加するために、神戸市から明石市にまたがる明舞団地周辺をはじめ、長田区、兵庫区、西宮、加古川、遠くは姫路などから帰国者の方々が参加されています。
活動内容は、生活に必要な日本語の学習会と、中国将棋、卓球、太極拳、広場踊り、秧歌(ヤンコ踊り)など、文化的背景を取り入れた交流活動を行っています。
また、地域コミュニティの一員として神戸まつりをはじめとしたイベントに参加したり、広場踊りや太極拳を通して学生や子どもたちと交流したりしています。
帰国者の方々は日本でも中国でも、これまでに多くの苦難を経験してこられました。昨今では孤立や高齢化に伴う医療や介護の課題などを抱えています。それでも交流会では笑顔でありのままの自分を出して、自由に自己表現を楽しんでいます。

日本語教室

生活に役立つ日本語や介護や医療の分野に関する日本語、季節や日本文化に関することなど様々な内容を取り扱い、楽しみながら日本語を学びます。

写真を撮影した時は「防災」をテーマにしていました。ボランティアで来てくださっている先生が、非常持ち出し袋を手に説明して下さり、帰国者の皆さんは質問をしながら興味深く見られていました。

またある時は、神戸の地理について学習しました。皆さんが住んでいるところがどの辺りかを確認したり、周辺の地名や駅名を確認したりしました。

太極拳

日本語教室の後は太極拳を練習します。太極拳が得意な人が先生になり、他の人は先生から学びます。太極拳をよく知らないという方も、先生の動きを真似しながら一生懸命取り組んでいます。

  • 参加者の声

太極拳は中国文化の中の体育遺産の一つです。太極拳は武術の一種で、一種の芸術でもあります。その自由自在な動きは、心身とも健康にする運動です。

二十四式太極拳は比較的に簡単なので、広く普及している運動でもあります。太極拳は動作がとても緩やかで柔らかなのが特徴です。忙しい生活リズムの現代人にとっても、慢性的な病気を抱えている人々にとっても良い運動です。毎日少しの時間を利用して太極拳をやることで、日頃の疲労と緊張感を解消できます。それは人々にとってとても必要なことだと思います。

毎日継続的に太極拳をやることは、高齢者にとっては身体を鍛え、強くし、病気にかからない身体作りのためにとても役に立つと思います。高齢者は激しい運動ができないので、「動」の中に「静」があり、「静」と「動」がうまく合体している太極拳は最も適した運動だと思います。

(一世配偶者 Rさん)

広場踊り

中国では朝や夕方などに公園に人が集まり、いろいろな音楽に合わせて踊る姿があちこちで見られます。交流会でも広場踊りは定番の活動となっており、皆でリズムを合わせて踊る様子はとても俊敏で、年齢を感じさせません。

秧歌(ヤンゴ踊り)

中国農村部の伝統舞踊で、チャルメラや太鼓による演奏に合わせて、色鮮やかな民族衣装を着て扇子を振りながら練り歩きます。帰国者の方々が中国の養父母の元で慣れ親しんだ踊りであり、中国と日本の戦争と中国人養父母という特別な歴史背景の中で身につけた芸術であるといえます。神戸まつりや地域の文化祭などで披露しています。

  • 参加者の声

「神戸まつりの新星」
2019年5月19日に開催された第49回神戸まつりのパレードの中で、私たちの出演は大変目立っていました。賑やかな中国東北のヤンゴ踊りが披露され、中国神話に出てくる孫悟空や猪八戒の姿もあり、また中国伝統の模型の船や、ロバ、花かごを担ぎながら踊る姿もありました。中国東北の華やかなヤンゴ踊りは響き渡る銅鑼の音とチャルメラの賑やかな演奏の中で行われ、とても賑やかな様子でした。多くの観客の拍手を得ることができ、これこそまさに神戸定住外国人支援センターの中国帰国者新長田交流会、神戸ヤンゴ隊、神戸チャイナドレス隊だと、誇りを感じました。私たちが神戸まつりに出演することによって、神戸まつりは国際色を増し、中国文化の宣伝にもなりました。私たちはまさしく、神戸まつりで輝く「新星」であったと思います。

当日、神戸定住外国人支援センターの理事長はスタッフたちを連れ、現場を指揮して頂きました。兵庫県残留孤児支援会、帰国者会、神戸中国帰国者日本語教育ボランティア協会など、先生達も続々と現場に来て頂き、また帰国者の家族も各地から大勢駆けつけてくれました。(私の娘と孫も大阪から見に来てくれました)こうした応援はとても励みになりましたし、本当に大盛況であったと思います。

しかし嬉しさの一方では、心配ごともあります。それは、現在私達のヤンゴ隊に参加している帰国者の大多数が高齢化しており、体に不調が出ていることです。平均年齢は70歳前後です。ですから、私はヤンゴ隊に跡を継いでくれる人が現れ、ヤンゴ隊がこれからも神戸まつりを盛り立て、神戸市民に中国文化を伝えてほしいと願っています。これは、私たち帰国者全員の願いだと思います。

(帰国者一世:Hさん)

コロナ禍になってから、多くの方が交流会への参加を控えるようになりました。以前は30人、40人といた参加者が、今は7~8人です。活動内容はコロナ対策が取れる内容に限られ、春節や敬老の日に集まって中国料理を食べたりカラオケをしたりといった皆さんが大好きな活動ができていません。それでも交流会に期待する声があるので、コロナ対策を取りながら、実施可能な内容で交流会が続いています。

交流会への参加を控える方々の多くは自宅で過ごす時間が長くなり、日本語を使う機会や友人と話す機会が減ったようでした。少しでも話をする機会を持ってもらおうと、今年に入ってから中国のSNS「WeChat」のビデオ通話を使ったオンライン教室が始まりました。オンライン教室については次の記事でご紹介します。